お墓の色といわれると、多くの方は灰色をイメージすると思いますが、墓石には実にたくさんの種類があり、石材の色もさまざまです。お墓を購入する際、どの色にするべきか、またどんな色を選んでもいいのかと悩む方も多くいるでしょう。
この記事では、お墓に使用する石材や墓石に彫る文字に使われる色の種類や選び方について解説します。
墓石の色を選ぶときの決まり事とは
お墓を建立する際の色選びに関して、特に決まりなどはなく、どの色を選んでも良いとされています。仏教においては五行思想などに由来する「赤・青・黄・白・黒」の五色(ごしき)が基本の色とされますが、ほかの色を選んでもかまいません。
昔は避けられる色もありましたが、現在ではほとんど気にされなくなっています。同様に、文字の色に関しても決まりはないため、好きな色を入れて問題ありません。
ただ、まれに霊園や墓地によっては指定の色が決まっていたり、特定の色が不可とされていたりする場合があるため注意してください。
墓石の色や文字の色の選び方
お墓の色は自由に決めて良いといわれても、実際にはどのような色を選べばいいのか迷ってしまう方も多いかもしれません。石材や彫刻する文字の色にはさまざまな種類があり、選択肢が多い反面、悩む原因にもなるでしょう。ここからは、墓石や文字の色を決める際の選び方のポイントを紹介していきます。
最初にデザインを決める
はじめに、お墓全体のデザインを決めてから色を選択する方法です。お墓には大きく分けて「和型墓石」「洋型墓石」「デザイン墓石」の3種類があり、それぞれで使用される色の傾向も異なります。まずはどのタイプのお墓にするかを決めると、色の選択肢も絞りやすくなるでしょう。
一般的な縦長の和型墓石なら、色も伝統的な白や黒、灰色などがおすすめです。一方、モダンな洋型墓石や個性豊かなデザイン墓石では、青や緑、赤などのカラフルな色も好まれます。特にデザイン墓石なら、ガラス製のお墓のように、これまでにない色をもった墓石も実現可能です。
また、東日本では黒系、西日本では白系の墓石が多いといったように、地域によっても人気の色に傾向があるため、参考にしても良いでしょう。
故人のイメージにあった色を選ぶ
墓石の色は基本的に何色を選んでも問題がないため、故人のイメージにあったお墓を選ぶのも有力な選択肢です。お墓を建立するのは、何よりも故人の供養が目的であり、遺族にとっては、故人を偲びながら思い出に浸れる大切な場所といえます。
生前に好きだった色や生き方、性格などから思い浮かぶ色など、故人のイメージに合った色の墓石や文字を選べば、お墓参りをする際もより故人の面影を感じられるようになるはずです。
最近では自由度の高いデザイン墓石も普及しており、多種多様な色・デザインのお墓を建てられるようになっています。色を決める際、難しく考える必要はありません。故人にぴったりだと思う色を選んでみてはいかがでしょうか。
石材の特性から墓石を選ぶ
最初に使いたい石材の種類を決めてから色を選んでいく方法もあります。お墓の色は墓石に着色しているわけではなく、石材が本来もっている色が反映されているものです。そのため、使用する石材によって選択できる色もある程度限定されます。
したがって、耐久性や品質などから使いたい石材を先に決めておき、後から色を決めるのも1つの方法です。お墓を建立する際、選べる石材は産地や成分などの違いから300種類以上があるといわれており、何を選ぶかは非常に重要となります。
石材の品質もそれぞれに違いがあるため、購入の際は価格だけをみるのではなく、耐久年数など、どういった特性をもつ石材なのかをきちんと確認するようにしましょう。
墓石の色にはどんな種類がある?人気色や色の意味を紹介
墓石の色には、一般的にイメージされる灰色のほかにも、黒や白といったモノトーンから赤や青などカラフルなものまで、さまざまな種類が存在します。お墓で用いられる色の種類や人気色、それぞれの色がもつ意味などをみていきましょう。
灰色
墓石の色として最も一般的な灰色。仏教的には特に意味をもつ色ではないものの、落ち着いた雰囲気があるため、昔から定番になっています。世代問わず受け入れられやすい色です。
石材では「白御影石」が用いられる場合が多く、ほかに外国産では安く品質も良いインドの「アーバングレー」が広く使われており、同じ灰色でも石種によって色合いが異なります。
黒色
仏教において仏陀の袈裟(僧侶が纏う布状の衣装)を示す色で、侮辱による怒りを抑えて耐え忍ぶ忍辱(にんにく)を表しています。地域性が高く、特に関東や東北地方などで多く用いられている色です。
黒色の石材としては、最高ランクの高級国産石材である「浮金石」が有名で、ほかに外国産ではインドの「クンナム」なども使われています。
白色
古くから縁起が良いとされており、仏教では仏陀の歯を示す色で、生前の業や煩悩などを浄める清浄(しょうじょう)を表します。
白色の石材を代表するのが、高級国産墓石の最高峰にして、花崗岩のダイヤモンドとも呼ばれる「庵治石」です。ほかにも「紀山石」や「真壁小目」などが使用され、黒色と同様に関東地方で人気があります。
赤色
仏教において仏陀の血液を示すとされる色で、すべての人に対する救済と絶え間ない精進を意味しています。かつては縁起が悪いとされていましたが、お墓の洋風化などが進んだため今では一般的です。温かみのある赤系は特に女性から支持の高い色です。
赤色の石材としては、「万成石(まんなりいし)」が多く使われるほか、外国産ではインド赤(ニューインペリアルレッド)があります。
青色
仏教では仏陀の髪の毛を指しており、精神を落ち着かせた状態である禅定(ぜんじょう)を意味する色です。ほかに、静脈を表すといわれる場合もあります。
墓石には、紫がかった深い青で「紺碧」と呼ばれる高級青御影石の「天山石(てんざんいし)」や青みのある石の表面に白い長石が吹雪のように点在する「深山ふぶき」などが使用されます。
緑色
珍しいところでは、緑の墓石もあり、重厚感がある色合いのため落ち着いた雰囲気をもち、和型墓石との相性も良好です。仏教では青と同様に仏陀の髪を表し、禅定を意味します。
緑色の墓石には、最高級墓石の「本小松石青目」や矢掛青の異名をもつ「備中青みかげ」などがあり、最近では外国産で黒緑色をしたインドの「M-1H」も人気です。
五色を参考に色を決めるのも1つ
お墓といえば、灰色のイメージが強いのですが、実際には豊富な色の選択肢が存在します。どの色にすればいいのか迷ってしまった場合は、仏教の五色(ごしき)がもつそれぞれの意味を参考にして決めるのも1つの方法です。
五色とは「赤・青・黄・白・黒」の5色で、前の段落でも紹介しているように、各色は歯や髪の毛、袈裟、肉体など仏陀の体の一部を表しており、「煩悩を浄める」「怒りに耐える」といった異なる意味をもっています。お墓の色を決める際には、五色の中から気に入った意味や故人に合いそうな意味をもった色を選んでみるのも良いでしょう。
墓石に彫る文字塗料の色の種類
お墓の色と同様に、墓石に彫る文字にも多くの色が使われます。よく用いられるのは白・黒・赤・青・金などで、色を入れないという方もいます。それぞれの色がもつ特徴は次の通りです。
・白……墓石の文字色としては一般的な色です。黒御影石、白御影石の両方とも相性が良く、特に関西地方で人気があります。
・黒……文字色としてもよく選ばれており、汚れをあまり気にせずに済むのがメリット。特に関東地方で人気のある色です。ただ、黒御影石の場合は色が同化してしまい、文字が映えにくいため避けたほうが良いでしょう。
・赤……墓石の文字においては、生きている人の名前に使われる場合が多い色です。正面にはあまり用いられませんが、生前に戒名をつけたり、建立者の名前を彫ったりする際に用いられています。
・青……一般的に文字ではあまり見られませんが、墓相墓(人相や家相のように墓石の色や形状、場所などを意識して建立された縁起が良いとされるお墓)で使用されるケースが多い色です。
・黄色……墓石に黄色で文字を入れる例は稀ですが、仏教においては重要な色で、仏陀の体を表し、揺るぎない確固たる姿勢の「金剛」を意味します。
・金色……五色に含まれず、仏教的な意味はないものの、上品かつ煌びやかな印象を与えるため、九州地方でよく用いられている色です。黒色の墓石にとても映え、黒御影石に金文字の組み合わせは人気があります。
・色なし……あえて文字に色を入れず、自然な風合いにする手法です。特に自然石を使用する場合などに多用され、石材そのものの持ち味を活かした控えめな仕上がりになります。
色に関する墓相について
お墓の色を決める上で、1つの要素になるのが墓相です。人相や家相のようにお墓の形状や色、位置、方角などから運気や健康、子孫の繁栄に影響を与えるとする考え方を墓相といい、墓相を用いて吉凶を判断する占いの一種を墓相学と呼びます。
例えば、「黒のお墓は縁起が悪い」といわれるのは墓相学によるものです。ただ、墓相や墓相学自体は仏教とは関係がなく、仏教においてはお墓に黒を使うのは問題とされず、むしろ五色の1つとして縁起が良いといわれています。
墓相はお墓の色などを選ぶ際、目安の1つになりますが、あくまで占いのようなものであり、科学的根拠などは存在しません。墓相学に基づいたお墓は吉相墓と呼ばれて縁起が良いといわれるものの、実際に建てようとすれば費用もかかってしまいます。
そのため、無理に墓相に合わせて色や形にとらわれる必要はなく、故人や遺族が本当に望むお墓を建てることが最も望ましいといえるでしょう。
墓石の色あせ・文字の色落ちの対処法
お墓の文字は常に屋外で雨風に晒されているため、年数の経過とともに色あせや色落ちを起こす場合があります。経年劣化した文字のメンテナンスは、石材店に依頼する方法と自分で塗る方法の2種類です。
綺麗に仕上げたい場合は、石材店に頼むのがおすすめです。同時に墓石のクリーニングもお願いすると良いでしょう。業者に依頼した場合の費用相場は、1つの面につき数千~1万円程度で、金額は文字の色や石材店ごとに異なります。
なるべくお金をかけたくない方におすすめなのが、自分で直す方法です。専用のペンキや名入れ補修ペンなどを用意すれば、文字色が剥げた程度の簡単な劣化ならDIYでの作業が可能です。費用も数千円で済むため、安く済ませたいならこちらがおすすめなのですが、上手くできるとは限りません。自信がない場合はきちんとプロに依頼しましょう。
色にこだわりたいならデザイン墓石がおすすめ
墓石や文字に使われる色には特にルールなどは定まっておらず、さまざまな色から自由に選べます。一般的には灰色のイメージが強いかもしれませんが、大切なのは故人らしさ。黒や白、赤、青など、何色が一番故人の面影を感じられるかを考えて選択すると良いでしょう。
近年増えてきたデザイン墓石なら、従来の形やイメージにとらわれず、自由なお墓を建てられるため、色にこだわりたい方には特におすすめです。なかでも、ガラスを用いた「光り墓」なら、これまでになかった色も実現可能。故人の面影を永遠の輝きで表現できる「最後の贈り物」に最適な墓石として人気を集めています。
故人らしいお墓にするため、色までしっかりとこだわりたいとお考えの方は、資料と一緒にアートガラスのサンプルもお送りできますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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