墓石の選び方とは?墓石の種類やお墓選びポイントを解説

監修者の紹介
三輪彰
【資格】
一般社団法人 日本石材産業協会認定 お墓ディレクター1級
【経歴】
業界経歴20年以上。 石材メーカーで営業部に所属し、小売店様へ石材店卸で培った豊富な知識と、採石から施工までの一貫体制でお客様のサポートを行う。 昨今では、光り墓や石材コーティングの提案などもしている。

お墓の購入は一生に一度あるかないかの買い物です。墓地や供養形態などは決まったけれど、肝心の墓石の選び方は何を基準にしたら良いかわからず、困っているという方も多いでしょう。

 

代々使うものだから、いい墓石を選びたいと考える一方、どの墓石も同じにみえてしまったり、種類が多すぎるのに値段がピンキリで判断しづらかったり、初めての墓石選びには迷うポイントがたくさんあります。

 

本記事では、墓石の形や値段など、墓石選びの基準を紹介しながら、墓石の選び方を解説します。希望のタイプ別おすすめの墓石も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

 

墓石の8つの選び方 

墓石を選ぶ際、何を優先するかは人それぞれ異なります。

 

・好みのデザインで決める

・墓地や石材のランク

・値段を重視する

・石の材質や耐久性

・故人への思いやメッセージを大切にする

 

初めての方は、この中から自分が一番重視したい選定ポイントを1つ、またはいくつかピックアップして、墓石選びの基準にするといいでしょう。次の章で具体的に、墓石を選ぶときの基準について解説します。

 

墓石の形態

1つ目の選び方は、形状から好みの墓石を選択する方法です。墓石は見た目によって、雰囲気や見た人に与えるイメージが大きく変わります。

 

お墓と聞くと、長方形の墓石をイメージする方が多いかもしれませんが、墓石には様々な形態があり、代表的なものだけでも、和型・洋型・デザイン型の3種類に分かれます。

 

それぞれの形態にはどのような特徴があり、どういった方に好まれているか、詳しくみていきましょう。

 

和型 

江戸時代に一般的になった伝統的な長方形の墓石です。お墓と聞くと多くの方は和型墓石をイメージするのではないでしょうか。

 

和型墓石はお釈迦様の骨を祀る仏舎利塔がモチーフといわれ、竿石・上台・中台・芝台(下台)の4つの部位および付属品から構成されます。竿石・上台・中台はそれぞれ、天(家庭円満)・人(出世、人望)・地(財産維持)を意味します。

 

一般的な石塔タイプのほか、以下のような特徴的な形状も存在します。

 

<大名墓>

竿石に日本家屋の屋根を被せたような形状です。

 

<五輪塔型>

自然界の5大要素を表す5つの部位で構成される塔のような形状です。どちらも元々は有力者のお墓として建てられていました。和型墓石は現在でも、伝統的なお墓を好む方に支持されていて、寺院との結びつきが強い地域で多く選ばれています。

 

洋型 

欧米風デザインの墓石で、モダンでおしゃれな外観ながら格調も備えており、近年人気が高まっています。和型墓石より背が低く、横幅が広いのが特徴で、外国映画に出てくるお墓のイメージに近いです。

 

洋型墓石も和型と同様、いくつかの種類に分かれます。

 

<オルガン型>

名前を彫る前面の竿石部分が傾斜しているタイプ。見た目がオルガンに似ているのが名前の由来です。

 

<ウォール型>

竿石を縦長にした省スペースタイプ。面積の限られる都市部の霊園でよくみられます。

 

<プレート型>

名前や文字の刻まれたプレートを芝生に直接埋め込むタイプ。使う石が少ない分、他の洋型墓石より安価なのが特徴です。洋型墓石は都市部を中心に人気があり、公園墓地や芝生墓地とともに増える傾向にあります。

 

デザイン型 

伝統的なお墓とは異なる独自デザインの墓石。故人の趣味を反映したデザインやガラス、普通の墓石とは違った石材を使用したお墓など、多種多様なタイプの墓石から故人に合ったものを選べるのがデザイン型の魅力です。

 

主なデザイン型墓石には以下のものがあります。

 

<ガラスを使用>

お墓全体がガラスでできていたり、部分的に色ガラスを使用したりと通常の墓石より見た人に明るい印象を与えます。

 

<違う種類の石を使用>

2つ以上の異なる種類の石材を組み合わせたタイプです。

 

<個性的な彫刻>

オリジナルデザインの彫刻を施したタイプです。通常の和型・洋型墓石にも対応可能で、低価格でデザイン墓石に変更できます。

 

<ユニークなデザイン>

ピアノや本など、故人のイメージをもとに特徴的にデザインされたタイプです。通常の墓石より高価になる場合もありますが、故人らしいお墓を建てたい方に支持されています。

 

値段 

墓石を選ぶ際、価格は多くの方が気にされるポイントです。値段を決めるときは、最初におおよその予算を設定しておき、予算内でおさまるような墓石を選ぶといいでしょう。墓石の価格を決めるのは主に、石の種類と使用量、デザイン、施工工数の3つです。

 

墓石はどの石種をどれだけ使用するかで価格が決まり、高価な石を多く使えば、それだけ値段も上がります。また、凝ったオリジナルデザインの型や彫刻、付属品が多く施工に手間のかかるお墓はそれだけ割高になります。

 

それぞれの要素はお互いに関係しており、予算を決める際は総合的に判断する必要があります。3つの要素がどのように墓石の価格に影響を与えているか、詳しくみていきましょう。

 

墓地の広さと石の使用量 

石の使用量は、お墓を建てる区画の広さによって変わります。墓地が広ければその分、墓石も大きくなる傾向があり、使う石の量に比例して値段も上がるわけです。

 

以下は墓地の区画と使用料の目安の一例ですが、同じ霊園でも区画の広さで値段は大きく変わります。(注:地域によって異なりますのであくまでも参考です。)

1.00㎡(1.0×1.0m)  38万円
1.50㎡(1.2×1.25m)  57万円
1.80㎡(1.2×1.5m)  68.4万円
2.25㎡(1.5×1.5m)  85.5万円

 

少しの面積の違いが金額に大きく影響しており、墓石に関しても同じことがいえます。広い墓地では墓誌や灯篭、外柵など付属品も増える傾向があり、石の量が多くなる理由の1つになっています。

 

また、単純な量だけでなく、石種も価格を決める大きな要素です。同じ使用量でも高価な石材は価格の上がり方が大きく、どの石をどれだけ使うかで予算を考える必要があります。

 

デザイン 

おしゃれなデザインや凝った外観の墓石は魅力ですが、それだけ値段にも大きな影響を与えます。使用量や石種に差がなくても、オリジナルデザインの墓石は伝統的な形状のものより高価です。

 

他人のお墓と被らないよう、故人への想いを込めてこだわりのデザインを施したいと考える方もいますが、個別での注文になるのでデザイン料がかかります。ひとくちにオリジナルの墓石といっても、どのようなデザインにするかで費用はピンキリです。

 

完全にオリジナルのデザインで凝ったものになるほど値段が高くなりますが、すでにあるデザインから選択するセミオーダーなら、費用を抑えられるケースもあります。それでも、相場として150万~250万円程度を考えておくほうがいいでしょう。

 

施工工数 

施工工数は石の使用量や墓石のデザインとも関係があり、工数が多いほど値段も高くなります。彫刻が入った複雑なデザインや、墓石の周りに墓誌や花立のような付属品・装飾品が多いお墓は、加工する石の量が増えるため高価になりやすいです。

 

また、施工工数はお墓を設置する場所によっても変わります。平らに整備された場所に建てるなら施工も手間がかからずに済みますが、山の上や斜面のように地面があまり整備されていない場所や、墓石を積んだトラックが墓地の近くまで行けないような場所では施工にかかる工賃も高額です。

 

墓地選びの際には、お墓の建てやすさを考慮しないと、後で施工費用が割高になる可能性もあるので注意してください。

 

石の産地(国産・外国産)

石の産地は墓石の価格や特徴を決める重要な要素です。産地には大きく分けて国産と外国産があり、最近では日本国内に流通している石の多くを中国やインド、韓国、南アフリカなど外国産が占めています。

 

外国産の墓石は生産量が多く、種類や色のバリエーションが豊富です。国産より安価で50万円ほどで買えるものもありますが、品質が悪いとは限らず良い石もたくさん存在します。

一方、国産墓石はなんといっても品質に優れており、硬度や耐久性の高い石やキメ細かな美しさに定評のある石などがあり、一部はブランドイメージが確立しています。

 

その分、ブランド墓石なら数百万円と値段がかなり高額になる石も多く、一概にどちらが良いとはいえないでしょう。

 

硬さ 

石の硬度は墓石の耐久性に関係する重要なポイントです。墓石は常に屋外に置かれるため、雨風による風化や劣化は免れません。お墓は子孫の代まで数十年、場合によっては100年単位で使用するものですから、なるべく頑丈な墓石を選ぶようにしましょう。

 

墓石の硬さを表す尺度には「N/mm2」が用いられ、硬度が上がるほど耐久性も高くなります。例えば、御影石の場合、数値が高いほど硬い石といわれます。

 

同じ石でも種類によって硬さが異なり、硬い石はそれだけ加工に手間がかかるので、費用が高額になる傾向があります。

 

また、日本は地震が多い国ですから、お墓の耐久性を考えるなら、墓石自体の硬度だけでなく、設置する墓地の地盤の強さや施工にも気を使うほうがいいでしょう。

 

吸水率 

お墓の耐久性において吸水率はとても重要です。墓石がどれほど水を吸収するかを数値で表したものを吸水率といい、値が低いほど水に強い石といえます。

 

お墓は屋外で何十年も雨風や台風などに晒されるため、長い年月とともに、少しずつ水を吸収して劣化していきます。石の表面には細かな隙間や孔が開いているので、吸水率が高いと水が内部に入り込んでしまうのです。

 

吸水率が高い墓石では、年数とともに風化して壊れやすくなり、以下のようなトラブルが起きる可能性があります。

 

・石が変色したり光沢がなくなりやすい

・シミができやすい

・苔が生えやすい

・鉄成分の多い墓石では錆が発生しやすい

・ヒビが入る事もある

 

特に風雨の当たる屋外に設置する墓石を選ぶ際は、吸水率も基準に入れるようにしましょう。

 

キメの細かさ 

キメの細かさは墓石を選ぶ際に重視される要素の1つです。キメが細かい墓石のほうが人気が高い傾向にありますが、必ずしもキメが細かければ良いと決まっているわけではありません。

 

墓石のキメには、細かい順に糠目、細目、小目、中目、粗目などの種類に分かれています。粗目のようにあまりにキメが荒い石は使われる例が少なく、通常用いられるのは小目や細目などです。

 

一般論としてキメの細かい墓石のほうが、見た目が綺麗といわれており、同じ石種でも価格が高価な傾向にあります。荒い石は吸水率が高い場合が多いとされますが、細かい石より硬度に優れているものもあり、一概に耐久性の良し悪しは決められません。

 

見た目に関しても個々の好みがあるので、自分が美しいと思う石を選ぶのが望ましいでしょう。

 

色 

お墓の色といわれると灰色や白、黒などを定番としてイメージする方が多いと思いますが、現代では、他にもバリエーション豊富な色を選べるようになっています。

 

定番の色以外にも、赤、青、緑、ピンク、茶色など、最近のお墓は非常にカラフルです。赤のように血を連想させるからと昔は避けられていた色の墓石も登場しています。

 

基本的には黒や灰色など定番の色が人気ですが、洋型やデザイン型では個性的な色のお墓も少なくありません。和型墓石は背が高いので、あまり派手な色にすると威圧感を与えるといわれますが、絶対に気にする必要はなく好みに応じて選べばいいでしょう。

 

色を選ぶ際は完成形をイメージし、どのような色になるか、できれば実際の石も確認しながら決めるようにしましょう。

 

ランク

墓石にはランク分けが存在しており、同じ石種でもランクが違えば価格も異なります。ランク分けといってもすべての墓石に共通する正式な基準ではなく、それぞれの石種ごとに採石業者などが独自に行っているものです。石によって分け方や呼び方が違い、例えば、大島石ではランクを「特級」「一級」に分類しています。

 

ランクは、色や濃淡、キメの細かさ、成分、採石量などをもとに採石業者によって決められ、上のランクになるほど値段も高額になっていきます。

 

しかし、そもそも墓石のランクは業者の判断によるもので、統一された審査機関は存在しません。基本的に高ランクほど良い石が多いのですが、あくまでも目安の1つと考えたほうがいいでしょう。

 

タイプ別:おすすめの墓石 

様々な墓石の選び方を説明してきましたが、何を重視するかは人によって違います。ここからは、どんなお墓にしたいのか、希望のタイプ別におすすめの墓石を紹介していきます。


耐久性を重視したい

何十年も使用する墓石ですから、やはり頑丈なものが望ましいと考える方は多いでしょう。耐久性の高さで選ぶなら、長年使われてきた国産の墓石がおすすめです。

 

大島石

愛媛県今治市で採石される大島石はキメ細かく、青みがかった色合いが特徴。硬度が高く、吸水率は低く、艶持ちも優れています。

 

庵治石

香川県庵治地方で採れ、花崗岩のダイヤモンドとも呼ばれる代表的な高級石材。構成する鉱物が小さいため、高硬度、低吸水率で、磨くほどに艶が出てきます。

 

真壁石

茨城県桜川市で採掘される石で耐久性が高く、採石量が多いので国産墓石の中では比較的値段も安くなっています。

 

天山石

佐賀県唐津市で採れる天山石は、硬度・吸水率ともに非常に優れており、日本有数の銘石といわれます。

 

値段の安さを重視したい 

価格で選ぶなら、ネット検索を利用して安い石材店を探してみましょう。一般的に墓石の値段は80万~100万円ほどが目安ですが、ネット経由の購入の場合、10万~20万円台で抑えられる場合もあります。

 

あらかじめ値段の決まっている定額墓石なら、安いものだと50万台と通常の5割程度の値段でお墓が購入できます。さらにアウトレット墓石の中には、20万円を切っている店舗もあり、購入費用を5分の1程度まで抑えられます。

 

石材店によって安くなる時期がある 

石材店によっては季節や時期に応じて墓石の値段が安くなる店舗があります。お盆やお彼岸にセールを行っている石材店は一定数存在するため、お墓を建てる際は、値引きの時期を狙うのも1つの方法です。

 

定番の墓石を選びたい

変わった石や安い墓石もいいけれど、やはりお墓は定番の石を使いたいという方もいるでしょう。

 

定番の墓石といえば、やはり御影石が代表的です。花崗岩の一種である御影石は、国内で最も多く使われている墓石です。頑丈で吸水率も低いため寿命も長く、国産からインド、中国など海外産まで種類も豊富。黒御影石や白御影石といった色のバリエーションが多いのも特徴です。

 

国内なら庵治石や浮金石、大島石、真壁石、海外なら中国の黒龍石、インドのクンナム、南アフリカのベルファーストなどがよく知られています。産地や価格帯も様々なので、要望にあった墓石に出会いやすいのも御影石を選ぶメリットといえるでしょう。

 

デザイン重視で人と被りたくない 

「他とは違ったデザインの墓石がほしい」「故人を想った特別なデザインのお墓にしたい」といったデザイン重視の方におすすめしたいのが、ガラスのお墓「光り墓」です。アートガラスで作られた墓石は文字通り、光を放つように明るく、それでいて、お墓としての格調と厳かさも兼ね備えています。

 

ガラスと聞くと壊れやすそうに思えますが、薄いガラスを何層にも重ねて熔解後に冷やし固めできた「光り墓」は通常の墓石よりも耐久性に優れ、風化・劣化が起こりにくいのが特徴です。

 

1つひとつハンドメイドで丁寧に作られ、豊富なバリエーションのデザインから、故人のイメージにぴったりな世界で1つだけのお墓が出来上がります。故人へ心を込めた「最後のプレゼント」として最適な墓石といえるでしょう。

 

ポイントを理解して墓石を選ぼう 

多くの人にとって、お墓は一生に一度の大きな買い物であり、なかでも数十年から百年以上にわたって使用する墓石選びは特に重要です。

 

外観のデザインや値段、石の種類、耐久性、見た目のキメや色など、墓石の選び方には様々なポイントがあるため、どの基準を優先すべきか事前にはっきりさせておきましょう。

 

お墓と聞くと定番のものがイメージされますが、現在は「光り墓」のように新しい墓石も登場しており、豊富な選択肢が存在します。

 

今回ご紹介したポイントを理解した上で、故人や家族に合った墓石を選択することが大切といえるでしょう。

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