【かんたん解説!】墓じまいの手続きの流れと費用について

監修者の紹介
三輪彰
【資格】
一般社団法人 日本石材産業協会認定 お墓ディレクター1級
【経歴】
業界経歴20年以上。 石材メーカーで営業部に所属し、小売店様へ石材店卸で培った豊富な知識と、採石から施工までの一貫体制でお客様のサポートを行う。 昨今では、光り墓や石材コーティングの提案などもしている。

少子高齢化や都市化が進む現代の日本では、お墓の管理が難しくなり、墓じまいを考える方が増えているようです。しかし、いざ墓じまいをしようと思っても、難しそうで何をすればいいかわからないという方は多いのではないでしょうか。

 

墓じまいには行政手続きが必要で、勝手に遺骨を移したり、お墓を撤去したりすると、法律上問題になってしまう恐れもあります。

 

そこでこの記事では、個人でもできる墓じまいの手順や必要な書類と準備方法を解説。墓じまいを検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

 

墓じまいとは?

 

お墓を撤去して区画を更地に戻し、墓地の使用権を返還することを墓じまいといいます。近年は少子化などの影響で、継承者がおらず無縁仏になってしまう可能性があるお墓も多く、墓じまいを選択する方が増えています。

 

ただし、遺骨をそのまま放置すると法律違反になるため、単に墓石を撤去するだけではなく、「改葬許可証」をもらい遺骨を新しい納骨先に納めなくてはなりません。許可をもらうには、「改葬許可申請書」を役所に提出しなければならず、墓じまいは行政手続きのもとで、きちんと進める必要があるのです。

 

墓じまいと聞くと、お墓を撤去するだけの作業のように思いますが、実際には行政への申請や納骨なども行う必要があり、これら一連の手続きをまとめて墓じまいと呼んでいます。

 

墓じまい(改葬)の手続きの流れ

 

実際に墓じまいを進める際の手続きの流れを説明します。法律上墓じまいは、遺骨を移動させる「改葬手続き」の流れの1つとして扱われます。そのため、ここでは改葬手続き全体を解説しながら、その中で墓石の撤去についても説明します。

 

お墓の名義人・親族に了承を得る

 

墓じまいをするには、お墓の名義人や埋葬者の親族からの許諾が必要です。特に、墓地の名義人である使用者の同意がなければ、墓じまいはできません。別の人が改葬手続きを行う場合は、「承諾書」に名義人の署名・捺印をもらう必要があります。

 

その他の親族なら承諾書までは不要なので、同意なしでの手続きも可能です。しかし、親族への相談・同意を軽視したり、反対されているのに無理に進めたりすると、費用負担や新しい納骨方法で揉めるなど後々大きなトラブルにつながりかねません。はじめに、関係者に墓じまいをする旨を伝え、全員から了承を得てください。

 

墓地の管理者・お寺に相談する

 

現在の墓地を管理しているお寺や、霊園などに墓じまいをする旨を伝えます。墓じまいの手続きで改葬許可証を取るためには、管理者の発行する「埋葬証明書(埋蔵証明書)」や申請書への署名・捺印が必要です。

 

管理者は墓地の種類によって異なり、それぞれの相談先は下記を参考にしてください。

民営霊園 管理事務所
公営霊園 管理事務所(ない場合は地方自治体)
共同墓地 墓地管理委員会
寺院墓地 お寺

 

墓じまいの件を伝える際、寺院墓地では少し注意が必要です。お寺にお墓がある場合、墓じまいは檀家をやめる可能性を意味します。檀家とは、ある寺院の信者として、お布施などで経済的にお寺を支援し、葬式や法事を行っている家のことです。檀家の減少はお寺の収入事情にも関係する問題です。

 

墓じまいはお寺にとって好ましい話ではない可能性が高いため、はじめから決定事項として伝えるのではなく、これまでお世話になってきた感謝の気持ちも交えながら丁寧に相談しましょう。

 

改葬先を決める

 

墓じまいでは、お墓を撤去した後、遺骨を移すための新しい納骨先も事前に決める必要があります。多くの自治体は次の埋葬先を決めるまで許可を出さないため、新しい受け入れ先からもらう「受入証明書」が必要になります。

 

改葬先は今後のお墓参りの行きやすさや管理のしやすさを基準に選ぶといいでしょう。現在のお墓が遠く、アクセスのいい場所を求めている場合や跡継ぎがいないなら、永代供養墓を検討してください。

 

永代供養墓は寺院や霊園が遺族に代わり、管理・供養を行ってくれるお墓です。不特定多数の方と一緒に埋葬される集合墓ですが、継承者がいなくても安心して任せられるため、近年、人気が高まっている埋葬方式です。

 

石材店に相談する

 

お墓の撤去・解体工事をお願いする石材店を決定します。石材店を選ぶ際は、特に行政への提出などはありません。自治体によっては墓じまい関係の書類に石材店の名前を書かなければならないところもあり、あらかじめ石材店を決める必要があります。

 

業者を選ぶときは、まず見積もりを出してもらって費用を確認し、複数社を比較して検討してください。できれば墓地から近く、これまでの施工実績も多い業者が望ましいです。

 

また、民営霊園で指定業者がいる場合は、管理事務所に話を伝えたとき紹介してもらえるので、そちらに依頼してください。寺院墓地の一部も、指定業者が決まっているところがあります。公営墓地や共同墓地、寺院墓地で指定業者がいない場合は、自分で業者を探します。

 

役所で行政手続きをする

 

関係者への相談や納骨先・業者などが決まれば、役所で行政手続きを行います。今のお墓のある地方自治体に「改葬許可申請書」を提出して「改葬許可証」を交付してもらいます。「改葬許可証」の申請手続きは後ほど紹介しますので、詳しくはそちらをご覧ください。

 

閉眼供養をする

 

お墓を撤去して遺骨を取り出す前には、「閉眼供養」と呼ばれる儀式を実施します。宗派によって方法は異なりますが、故人の魂を抜くため、墓前で読経を行うのが一般的です。

 

 

寺院墓地なら、日ごろお世話になっているお寺にお願いすると尚良しです。それ以外なら、同じ宗派の寺院に依頼するか、インターネットの僧侶派遣サービスなども利用できます。

 

閉眼供養は撤去当日に行う必要はないため、一週間ほど前に済ませる方も多いです。行政への手続き前に行っても問題ありません。

 

墓石を解体して墓地を返還する

 

石材店にお墓の解体・撤去を行ってもらい、敷地を更地に戻して墓地を返還します。できるなら、立ち合いするのが望ましいため、あらかじめ石材店と日程を調整しましょう。遠方のお墓の場合は、この日に閉眼供養も合わせて行えるようにするのがおすすめです。

 

取り出した遺骨は、当日、自分で現地に取りに行くか、石材店に依頼して納骨先まで送ってもらう方法もあります。一般的にはここまで墓じまいと呼ぶ場合も多いのですが、実際には、遺骨を新しく納める手続きが残っています。

 

改葬先に納骨する

 

墓じまいで取り出した遺骨を新しい受け入れ先へ改葬します。納骨の際には役所で交付された「改葬許可証」を墓地管理者に提出しなくてはならないため、必ず持参してください。

 

 

また、「開眼供養」を行う場合は、僧侶の手配も必要になります。納骨先や宗派によって異なるため、事前に確認しましょう。遺骨を新しい納骨先に納めれば、「改葬」は終了し、一連の墓じまいの手続きも完了します。

 

墓じまいの手続きに必要な「改葬許可証」について

 

墓じまいの手続きには、役所に申請を行い、地方自治体から交付される「改葬許可証」が必要です。「改葬許可証」をもらうため、必要な書類や手続きについて解説します。

 

「改葬許可証」とは?

 

すでに埋葬・収蔵されている遺骨を他の墳墓や納骨堂などに移転させるために必要な証明書を「改葬許可証」といいます。特別なケースを除き、一度埋葬した遺骨を取り出したり、別の場所に移したりするには改葬許可証が求められます。

 

取得するには今のお墓がある地方自治体への申請が必要で、墓じまいの際は、改葬許可証を移転元の墓地と新しい納骨先の両方に提示しないといけません。

 

改葬許可申請に必要な書類一覧

 

改葬許可証の交付に必要な書類は自治体によって異なるため、詳細については各自治体の役所で確認してください。一般的には、以下の書類の提出を求められます。

 

書類の種類 発行者 書類の内容
改葬許可申請書 墓地のある地方自治体 改葬許可証の交付を申請するための書類。申請の際には、ほぼすべての自治体で提出の必要があります。
埋葬証明書(埋蔵証明書) 墓地の管理者 今のお墓の管理者から発行してもらう書類。自治体によっては申請書への署名・捺印で済む場合もあります。
受入証明書 新しい遺骨の受け入れ先 遺骨の新しい受け入れ先の管理者に発行してもらう書類。申請書に墓地名を記入するだけの場合もあり、自治体ごとに異なります。
承諾書 墓地の名義人 現在の墓地の名義人(使用者)と改葬の申請者が異なる場合に必要となる書類。使用者の署名・捺印が求められます。
申請者の身分証明書 許可証の申請者 申請時に申請者の身分証明書のコピーを提出する場合があります。自治体によって異なるため、事前に確認しておきましょう。また、使用者ではなく申請者である点にも注意が必要です。

 

改葬許可申請の流れ

 

書類を準備して行政へ申請を行い、改葬許可証交付を受けるまでの流れを解説します。改葬許可証取得までの一連の流れは以下のようになっています。

 

  1.自治体から「改葬許可申請書」をもらう

  2.墓地の管理者から「改葬許可申請書」に署名してもらう

  3.新しい墓地の管理者から「受入証明書」をもらう

  4.墓地の名義人から承諾書をもらう

  5.役所で書類一式を提出する

  6.「改葬許可証」発行・手続き完了

 

 

自治体から「改葬許可申請書」をもらう

 

墓地のある地方自治体の改葬許可申請書をもらいます。書類は役所の窓口で配布されているほか、最近ではホームページからも入手できる場合もあります。

 

基本的に、遺骨1体につき1枚必要です。無料の場合がほとんどですが、自治体によっては1,000円ほど手数料が必要になるところもあるため、事前に確認しましょう。申請書の代表的なテンプレートは、以下の通りです。

 

引用元:https://www.city.shinjuku.lg.jp/content/000264214.pdf

 

申請書に必要事項を自筆で記入し、署名・捺印を行ってください。

 

墓地の管理者から「改葬許可申請書」に署名してもらう

 

現在の墓地管理者からも申請書に署名を書いてもらいます。署名は必要なく、代わりに故人が墓地に埋葬されていることを証明する書類として「埋葬証明書(埋蔵証明書)」を発行してもらう場合もあります。

 

どの証明書が必要になるのかについては自治体によって異なるため、事前に確認しましょう。墓地の管理者などから署名をもらう場合も自筆で記入するようお願いしてください。

 

新しい墓地の管理者から「受入証明書」をもらう

 

改葬先が決まると新しい納骨先の管理者から遺骨をきちんと埋葬する証明として「受入証明書」を出してもらえるので、写しを用意して申請書と一緒に提出してください。受入証明書は墓地からのサービスの一環として、ほとんどの場合、無料で発行できます。

 

もし改葬先を選んでいる途中なら、まだ改葬許可証の申請はできません。また、自治体によっては申請書に新しい墓地の名称を記入するだけで済むところもあるため、事前に確認してください。

 

墓地の名義人から承諾書をもらう

 

改葬証明書の申請を行う申請者と、今のお墓の名義人である使用者が別々の場合は、使用者の承諾書をもらう必要があります。役所の窓口やホームページから以下のような承諾書のテンプレートが入手できるので、名義人から自筆の署名と捺印をもらいましょう。

 

引用元:https://www.city.fuchu.tokyo.jp/kurashi/tetuduki/sonota/kaisoukyoka.files/syoudakusyo.pdf

 

名義人自身が申請を行うケースでは、承諾書は必要ありません。

 

役所で書類一式を提出する

 

書類一式が揃ったら、役所に提出して改葬許可証の申請を行います。最後にもう一度、すべての書類が揃っているか、記入箇所に抜けや漏れがないかチェックしましょう。

 

提出時最終チェックリスト

   ・必要書類は揃っているか?(改葬許可申請書・埋葬証明書・受入証明書・承諾書)

   ・書類には必要事項が記入されているか。必要箇所に捺印されているか。

   ・申請書に墓地管理者の署名・捺印があるか(埋葬証明書が必要ない場合のみ)。

   ・承諾書に使用者の署名・捺印があるか(申請者と墓地の名義人が異なる場合のみ)。

   ・申請者の身分証明書のコピーを添付しているか。

 

「改葬許可証」発行・手続き完了

 

提出した申請書などに問題がなく、書類が受理された場合は「改葬許可証」が発行され、手続き完了です。許可証を取得した時点から、遺骨を現在のお墓から別の墓地へ移せるようになります。

 

有効期限なども定められていないため、申請内容に変更がなければ時間が経ってから移転しても問題ありません。改葬許可証は、移転元や移転先で求められた場合は提示しなければならず、コピーを提出する場合もあるため、失くさないようきちんと保管してください。

 

墓じまいの手続きにかかる費用相場

 

墓じまいを検討されている方のなかには、費用面を気にされている方も多いと思います。実際に墓じまいにはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。

 

墓じまいに関するアンケート(「お墓の建て方・祀り方、墓じまいまで」主婦の友社 2021年)をみると、100万円以上200万円未満の割合が一番多くなっています。

 

また、お墓霊園探しの総合サイトが行ったインターネット上のアンケートでは、50万円未満の割合が一番多くなっていて、150万円未満の割合をすべて合わせると過半数になります。

 

引用元:ライフドット「墓じまいに関する意識調査」2019年

 

上記の表をみると、アンケートによって費用の金額に差があることがわかります。墓じまいの費用相場は安ければ50万円程度、高い場合は200万円程度を目安に、費用の予算を考えましょう。

 

墓じまいの手続きに関するQ&A

 

一般的な墓じまいの手続きについて説明しましたが、実際に墓じまいを検討すると、ほかにもさまざまな疑問や不安な部分が出てくるでしょう。そこでここからは、こうした墓じまいの手続きに関するさまざまな疑問にお答えします。

 

手続きは郵送でもできる?

 

現在の墓地が遠方にある場合、なかなか現地に行くのが難しい場合もあるでしょう。この場合多くの自治体では、郵送による改葬許可証の申請を受け付けており、手続きの大部分も郵送で行えます。

 

 

必要な書類は自治体のホームページでダウンロードが可能で、墓地管理者も事前に相談すれば、ほとんどのケースで、郵送でやり取りしてもらえます。また、墓石の撤去や閉眼供養に関しても立ち合いなしで行ってもらえるので、現地に足を運べなくても墓じまいは可能です。

 

墓じまいは個人か代行会社に依頼するのかどちらがおすすめ?

 

墓じまいは、用意する書類も多く、手順も複雑なため、初めての方には難しい部分もあり、代行業者に任せれば手間や時間を抑えられるメリットがあります。

 

代行業者といっても、すべての作業を任せられるわけではありませんが、以下のように、墓じまいに関する手続きのほとんどを引き受けてもらえます。

 

 ・出骨

 ・墓地解体撤去工事

 ・納骨

 ・改葬の書類手続き

 ・新しい納骨先の紹介など

 

代行業者の費用相場は20~30万円程度です。一部の作業だけを請け負ってくれる業者もあり、自分ができない部分のみ頼めば費用を抑えられます。代行業者に依頼できない作業は自分で行う必要があるため、自身の都合や予算に合わせて依頼するかどうか、どの作業を任せるかを決めると良いでしょう。

 

墓じまいの手続きは個人でも行える

 

難しそうに見える墓じまいですが、お墓を撤去して新しく納骨する手順や改葬許可証の申請方法がわかっていれば、個人でも行えます。墓じまいを検討されている方は、ぜひこの記事を参考に、まずは手続きを始めてください。

 

新しい納骨先をお探しの方には、ガラスの墓石「光り墓」もおすすめです。高い耐久性とビジュアル面の美しさを兼ねそなえたアートガラスでできた墓石は、これまでのお墓のイメージを覆すような明るさと個性豊かなデザインをもち、きっと故人のイメージにぴったりのお墓が見つかるはずです。

 

墓じまい後には、永代供養墓や樹木葬にも最適な「光り墓」を「故人への最後のプレゼント」として選んでみてはいかがでしょうか。

カテゴリ一覧