墓石の汚れが気になり、掃除の必要性が頭に浮かんだ。墓石の掃除をしたいが、どのようにすればいいのか分からない。久しぶりにお墓参りに行った際、このような疑問や悩みを持った人は、きっと多いのではないでしょうか。
墓石の掃除は正しい方法で行わないと、かえって墓石を傷つける恐れがあります。また、掃除の仕方がシミや汚れの原因になるなど、せっかくの行為が逆効果になるケースもみられます。
そこでこの記事では、墓石の正しい掃除の手順や方法、必要な道具、汚れの種類、また注意点などについて分かりやすく解説します。先祖代々のお墓をきれいに保ちたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
墓石の掃除は基本的に水洗いでOK!
墓石の掃除は、基本的に水洗いで行うのが鉄則です。墓石の一番上に設置された竿石(棹石や佛石、軸石などとも呼ぶ)の上から水を垂らし、竿石を支える上台石、そして上台石を支える下台石まで、スポンジなどで上から順番に水拭き掃除を行います。苔が付着してしまった部分については、柔らかいブラシでさっと取り除けば、おおむね問題はありません。
また、墓石の脇に設置されている墓誌や、灯籠(燈籠)などについても、墓石と同様に水をかけ、拭き掃除を行いましょう。故人の供養はお墓参りだけでなく、墓石の掃除も立派な供養。故人の体をきれいにする気持ちで、一つ一つ丁寧な掃除を心がけましょう。
墓石の掃除に必要な道具
墓石の掃除に、高価な道具は不要です。ホームセンターで特別な高価な道具を買いそろえる必要はなく、100円均一ショップなどで買える安価な掃除用具で、墓石を十分きれいにすることができます。
店舗によっては、お墓の手入れに必要な道具がセットで売られているケースもあり、それを購入すれば、基本的な墓石の掃除は十分に事足ります。
お墓の掃除に「必ず持っていくべきもの」としては、墓石などを磨くためのスポンジやブラシ。そして、水拭きするための雑巾やタオルが挙げられます。スポンジやブラシは傷の原因につながるケースもあるため、なるべく材質が柔らかいものを。さらに、掃除がしやすいよう、柄付きのものを選択するのがおすすめです。墓地によっては、水を汲んだりゴミを溜めたりするためのバケツが置いていないことが多いため、これらも同時に持参してください。
お墓を掃除するとなると、おそらくほとんどの人は、墓石の汚れを落とすだけではなく、お墓の敷地内の掃除も同時にすることになると思います。したがって、お墓の掃除を行う際は、実施する掃除の規模や状況、内容を鑑みて、事前に「持っていった方がいいもの」をリストアップしておきましょう。とはいえ、ほうきや軍手、植木バサミ、鎌、ひしゃくなど、一般的な道具さえあれば、お墓の掃除は十分に事足ります。
お墓(墓石)の掃除の手順
ここでは、お墓(主に墓石)の掃除の方法について、順を追って説明していきます。お墓の掃除は、墓石をきれいにするだけでは不十分。敷地内に備え付けられた灯籠や植木、化粧砂利(玉砂利)、ろうそく立て、手洗い水鉢、物置台などについても、同時に掃除を行いましょう。
お墓の敷地内の掃除
お墓の掃除を始めるに当たり、まずは傷んだ供え物や花などを処分します。また、お墓の敷地の中に植木がある場合は、ハサミを使い、見た目をきれいに剪定。その後、切った植木や、溜まった落ち葉、雑草などをまとめ、敷地内のゴミを処理しましょう。
尚、敷地内で生い茂ってしまう雑草の処理をするために、時折除草剤をまく人がいますが、これはなるべく控えてください。除草剤は化粧砂利を変色させる可能性があり、いたずらに撒き散らすと、竿石など他の石の変色につながるかもしれません。汚れている化粧砂利があれば、掘り起こしてザルに入れて水洗い。こうすれば変色の恐れもなく、安全且つきれいに洗うことができます。
墓石の水洗い
冒頭でも説明した通り、墓石(主に竿石・上台石・下台石)の掃除は、基本的に水洗いで問題ありません。竿石の上から水を垂らし、スポンジなどで軽く磨き、最後に布を使い水分をきれいに拭き取りましょう。
汚れが落ちにくい箇所については、ブラシを用いて墓石を磨きます。但し、繊細な石材や、硬いブラシでは傷がつく恐れがあるため、なるべく柔らかいブラシを選んでください。
尚、墓石の掃除をする人の中には、よりきれいにしたいという思いから、洗剤を使用してしまう人がいます。しかし、これはあまり良くありません。一般人が墓石を磨く際は、できる限り洗剤の使用は控えましょう。理由はさまざまですが、これについては後半の「注意点」で言及します。
線香皿・花筒などを洗う
墓石を磨いた後は、線香皿(香炉)や花筒(花立)、塔婆立てなど、お墓に設置されている付属品の汚れを落としていきましょう。これらのほとんどは、本体部分から取り外しできるようになっているので、一つ一つ取り外し、すべてを水洗いします。文字が刻印されている細かな溝の汚れ部分の掃除では、歯ブラシなどがあると便利です。
上記の小物類は、石やプラスチック、ステンレスなど、さまざまな素材が使用されています。掃除の際は傷の原因にならないよう、それぞれの材質に合った道具を選び、掃除を進めてください。
水を拭き取る
墓石や付属品の掃除を一通り終えた後、乾いた雑巾やタオルなどで、それぞれの水気をきれいに拭き取りましょう。これらを濡れたままに放置していると、ホコリや汚れが付きやすくなり、またコケが生える原因にもつながります。せっかくの掃除が逆効果になってしまうこともあるので、掃除の最後には、しっかりと水気を拭き取る習慣をつけてください。
墓石が汚れる原因
水洗いでも落ちない汚れが墓石に付着してしまう原因として、お墓の設置環境や経年変化、この2点を挙げることができます。
お墓の設置環境
一般的にお墓は、屋外に設置されます。常に墓石は、雨ざらしなど厳しい環境にさらされるため、ホコリや苔、カビ、花粉、動物の糞といった汚れが付きやすく、時間が経つと、これらが斑模様やシミに変化してしまう可能性があります。
また空気中には、お墓を傷みや汚れにつながる成分が含まれており、それらが雨や湿気によって墓石に付着。水分が蒸発した後にこびりついて残り、最終的に墓石に浸透してしまう可能性があります。もちろん、水鉢など水が溜まりやすい付属品に至っては、特に汚れが付きやすくなります。
経年変化
墓石は天然の石材で作られているため、どうしても経年変化が起こります。排ガスや酸性雨などに長期間さらされると、艶がなくなったり風化したりして、墓石の変化が徐々に進んでしまいます。特に、海の近くに墓地がある場合、大気や土壌に塩分が多く含まれているので、お墓のサビや変色といったさまざまな経年変化が進みやすい傾向があります。
経年変化は汚れとは異なり、これまでに説明した水拭き掃除だけでは、中々きれいになりません。したがって、お墓の清掃を専門に行う業者への依頼を検討する必要性が発生します。
墓石の汚れの種類
ここでは、墓石に付着する汚れの種類、汚れが発生する原因について、さらに詳しく説明します。個人でお墓(墓石)を掃除する際や、専門の業者に清掃を依頼する際、ぜひ参考にしてください。
水垢・黒ずみ
主に、花立てや水鉢に発生します。水垢や黒ずみは、空気中のホコリや花粉が、水の溜まりやすい場所や、文字の彫刻部分など掃除が厄介な箇所に付着することで発生します。また、放置された生花が傷んで雑菌が繁殖し、ヌメリを伴う黒ずみができる場合があります。
苔・カビ
日当たりや風通しが悪い場所で発生します。墓石の表面に菌が付着し、湿気が多く温かい場所で菌が一気に繁殖することが主な要因です。表面がツルツルとした摩擦が少ない墓石よりも、ザラザラとした墓石の方が、苔やカビが発生する可能性が高くなります。苔やカビは、水洗いで簡単に落とすことができるタイミングで、こまめな清掃を心がけることが大切です。
シミ
供え物の飲料(ジュースやアルコールなど)が墓石にこぼれ、そのまま放置された状態が続くと、シミが発生します。シミは、一度ついてしまうと水洗いでは簡単に落とすことが難しく、またシミの発生原因によって汚れの落とし方が異なります。
虹ヤケ(虹彩現象)
虹ヤケとは、大気中のさまざまな成分が墓石の表面に付着し、そこに当たった光が乱反射して、虹色に見える現象を意味します。黒御影石など色合いが濃い墓石で起きやすい汚れです。
墓石を掃除する際の注意点
墓石の掃除は方法を間違えると、きれいになるどころか、かえって傷や汚れにつながってしまいます。そこでこのパートでは、墓石を掃除する際に注意するべきポイントについて詳しく解説します。
家庭用洗剤の使用は控えよう
墓石の掃除では、家庭用洗剤の使用を控えるようにしてください。墓石の表面はツルツルとした見た目で、一見摩擦がないように思えますが、実際は「細孔」と呼ばれる目に見えない微細な隙間が表面に存在しています。
家庭用の洗剤を使用すると、細孔から薬剤が墓石の内部に染み込んでしまい、変色や劣化につながってしまう可能性があります。このため、家庭用洗剤や食器用洗剤は墓石を掃除する際、使わないようにしましょう。
尚、ホームセンターで販売されている墓石用の洗剤を使用する方法もありますが、石材や汚れの種類によって使うべき洗剤が異なるので、十分な注意が必要です。もし適切でない洗剤を使用したり、洗剤のすすぎ残しがあったりすると、汚れや劣化につながる可能性が高まります。したがって、洗剤はなるべく使わず、水洗いのみに留めましょう。
頑固な汚れ落としは業者へ依頼を検討しよう
しつこく頑固な汚れが付着しており、通常の清掃では落ちない場合、墓石の清掃を手掛ける専門業者を活用する手段もあります。
お墓(墓石)の清掃料金は、おおむね4~5万円が相場です。但し、お墓(墓石)の規模や清掃範囲、汚れの種類、特殊洗浄の有無、交通費などによって、大きく異なるのが一般的。もちろん安価なサービスでは、雑草やゴミの除去、墓石などの水洗いのみに留まります。
一方、高価なサービスでは、特殊洗浄によるシミ落としや、洗浄後に墓石のコーティングを行うものがあります。特殊な薬剤などを用いて磨きを行うコーティングは、墓石の表面を保護するメリットもあり、傷や汚れからお墓を守ります。
尚、専門のクリーニング業者に清掃を依頼する際、敷地の広さ、墓石の種類・大きさ、付属品の有無、汚れの種類などを事前に調べておくと、その後の見積もり作業がスムーズに進むでしょう。
墓石の掃除に関するQ&A
この記事では、お墓(墓石)の掃除の方法や、汚れの原因、注意点などについて説明しました。最後に墓石の掃除に関して、「これは使っても大丈夫なのか」「この部分は、どのように洗えばいいのか」など、各質問とその解決方法をピックアップしましたので参考にしてください。
メラミンスポンジは使用しても大丈夫?
メラミンスポンジは、メラミンフォームと呼ばれる特殊な材料で作られており、水をつけてこするだけでさまざまな汚れが簡単に落ちる非常に便利な道具です。但し、墓石掃除の利用には、注意が必要です。
通常のスポンジは、洗剤で汚れを浮かせて落とします。一方、メラミンスポンジは、研磨して汚れを削り取ります。墓石の清掃で活用すればしつこい汚れをきれいに落とすことができますが、それと同時に、墓石の表面に付着した細かな砂などを墓石本体にこすりつけてしまうことになります。
これによって、傷がついたりコーティングが剥がれ光沢が落ちてしまったりと、墓石にダメージを与える可能性が高くなります。メラミンスポンジには汚れを落とす効果があるものの、基本的に使用を控えるのが最善と言えるでしょう。
墓石の清掃でクエン酸や重曹は使用可能?
キッチンや風呂、トイレなどの清掃に活躍する重曹やクエン酸は、墓石の掃除にも活用することができます。特に、水垢の掃除に最も効果的です。
墓石の掃除では、クエン酸を水で5%程度に薄めたものを雑巾などに染み込ませ、気になる部分をゴシゴシ拭いていきましょう。但し、クエン酸が残っていると汚れの原因につながるので、使った後は再度水洗いをし、完全に水分を拭き取って下さい。
クエン酸と同様、重曹パウダーも墓石の拭き掃除に利用することができます。しかし、石材の種類によって傷がついてしまう可能性もあるため、まずは目立たない部分に使い、状況を確かめてから、墓石全体の清掃に用いましょう。
彫刻部分の汚れの落とし方は?
文字が彫刻されている部分の掃除は、毛足の長いブラシを用いて、一画一画進めるのがコツです。また、軍手を装着して水で濡らし、手で一つ一つ刻印部分を掃除するのもおすすめの方法です。
細かく小さな漢字が数多く刻まれている戒名などの部分については、不要になった歯ブラシを用いて、掃除を行いましょう。それでも尚、細かな漢字の部分については、先の尖った割りばしや、爪楊枝などを使うのも一つの方法です。
文字の部分は彫刻によって掃除の面積が大きくなっているので、根気よく汚れを落とします。竿石正面の彫刻は、墓石の中で最も目立つ部分の一つ。ここを掃除するだけでも、お墓の印象はぐっと良くなります。
高圧洗浄機は使用しても良い?
電気やエンジンの力で水の圧力を増幅し、強力な水の力で汚れを落とす高圧洗浄機。この機械は高い洗浄力があるため、落ちにくい汚れが簡単に落とせるのではないかと考える人も多いかもしれません。
しかし、墓石の清掃で高圧洗浄機を用いるのは控えましょう。苔やホコリなど表面についた汚れを落とすことにおいては効果を発揮するものの、水圧が強すぎるため長時間使用すると、かえって墓石を傷めてしまう恐れがあります。
彫刻部分など細かな装飾が劣化していた場合、高圧洗浄機の水圧によって、装飾を破損させてしまいます。それでも尚、頑固な汚れを落としたいと考える人は、高圧洗浄機を使うのではなく、専門のクリーニング業者に依頼することをおすすめします。
手入れに困ったらガラス墓も検討してみませんか?
「お墓の掃除に時間や手間がかかってしまう」「墓石のクリーニングを依頼したいが、費用が高く困っている」。このような悩みを抱えている遺族らにとって、おすすめの墓石が登場しています。当にそれが、ガラス製の墓石。弊社の「光り墓」です。
ガラス製の墓石は、花崗岩などで作られた墓石と比べ、手入れが非常に簡単です。窓ガラスを掃除するような感覚でサクっとメンテナンスが可能で、非常に手入れもスムーズ。布やブラシに水をつけて軽くこするだけで、汚れを一気に落とせます。
ステンドグラスのような見た目・特徴を持つガラス製の墓石は、デザインや色も豊富で、その名の通り美しい光を放ちます。さらに、故人や遺族の好みに合わせたさまざまな加工も可能です。
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墓石の掃除は定期的に行おう
お墓(墓石)の掃除に関して理解は深まりましたでしょうか。墓石は常に雨風などにさらされているため、掃除を少しでも怠っていると、すぐに汚れや傷みが進んでしまいます。こまめに掃除をすることにこしたことはありませんが、年に一回程度のペースで掃除をするとなると、大変な掃除になるでしょう。
冒頭で説明したように、故人の供養はお墓参りをすることだけではありません。お墓(墓石)の掃除も立派な供養です。故人との思い出などを頭に浮かべながら、一つ一つ汚れをきれいにしてください。
光り墓の販売などを手掛ける弊社フクイシでは、お墓に関する情報をわかりやすく紹介。墓石の選び方や種類、購入方法、価格などについて、随時さまざまな情報を発信しています。