墓石はいろいろな部材を組み合わせてできており、なかには、一般の方が聞き慣れない言葉も多数あります。普段、あまり気にすることはないかもしれませんが、それぞれの部材には違った役割があり、知っておくと墓石を購入する際にも役立つでしょう。
この記事では、墓石の各部分の名前や役割について解説します。
墓石本体を構成する各部材の名称と読み方
私たちの見慣れているお墓は、いくつもの部材から構成されています。はじめに、墓石本体を構成している各部材の名称と読み方、役割や込められた意味についてみていきましょう。
竿石(さおいし)
お墓の一番上に建つ最も目立つ部分で、埋葬の目印となる墓標の役割をもつ石です。「石碑」とも呼ばれるほか、「軸石」や「仏石」などの呼び方もあります。
竿石はお性根(故人の魂)が入る場所とされており、お墓のなかで最も重要な部分といえるでしょう。お墓参りで竿石に向かって手を合わせるのもこのためです。
竿石の大きさはお墓全体のサイズを決める要素で、7寸~8寸(約21~24cm)四方程度の大きさが多くなっています。
正面には、「○○家之墓」のような家名や「南無阿弥陀仏」などの言葉などが彫られ、背
面や側面には、建立者名や建立年月日や戒名などを入れるのが一般的です。
蓮華(れんげ)
蓮華台とも呼ばれる、竿石と上台に挟んで設置される飾り石です。蓮華には、仏教と関係の深い蓮の花の彫刻が施され、本尊の竿石を蓮の花の上に載せることは大きな功徳につながるとされています。
蓮華には「上蓮華」と「下蓮華」があり、購入の際は、上蓮華のみのものと上下蓮華から選択が可能です。上下蓮華のほうが華やかになり、さらに、すじ蓮華のように彫刻にもこだわれば、芸術的で美しく仕上がるでしょう。
しかし、それだけ費用もかかってしまうため、実際には蓮華のないお墓や蓮華を簡素化した「スリン台」を使用するお墓も多くなっています。
上台(じょうだい)・中台(ちゅうだい)・芝台(しばだい)
竿石と蓮華の下に配置され、墓石の土台になる石を「台石」といいます。台石は「天・人・地」を表すとされる3つの部材に分かれており、一番上を上台、真ん中を中台、一番下を芝台と呼ぶのが一般的です。
ただ、中台を下台と呼んだり、芝台を下台と呼んだりする場合もあり、地域によって呼び方はさまざまといえるでしょう。
お墓のデザインによっては台石にも装飾が施され、下蓮華は上台の天面を加工して作られる場合が多くなっているほか、上台には家紋などが刻まれる場合があります。
花立(はなたて)
故人へ花を供えるための石で、墓石の両脇に左右一対で配置し、中央に水鉢を置くのが一般的です。墓石によっては対にせず、献花台のように花を寝かせてお供えするタイプもあります。
花立は水が抜ける構造になっているため、通常は直接花を入れずにプラスチックやステンレス製の「花筒」と呼ばれる筒状の仏具を使用します。
水鉢(みずばち)
中央の窪みに故人へ供える水を入れておくための石で、死者が喉の渇きに苦しめられないよう作られました。楕円形が一般的ですが、四角い水鉢もあり、深さは数センチ程度が多いです。
通常は、水鉢専用の石を設置し、両脇に花立を置くタイプですが、ほかにも香炉と一体化したものや台石の上面に彫られる場合もあります。
香炉(こうろ)
墓石の前に設置され、故人にお線香をお供えするための石です。香炉は、線香を立ててお供えする「立置型」と寝かせてお供えする屋根付きの「くりぬき型」に分けられます。
従来は立置型が主流だったのですが、風雨により消えてしまう、灰でお墓を汚してしまうなどの難点があったため、最近では屋根付きタイプが一般的になりました。
香炉には、長方形でシンプルな形の「角香炉」や、経典をのせる経机のようなデザインをした「経机香炉」など、さまざまな種類があります。屋根やくりぬきのタイプなどバリエーションも豊富でお墓のデザインに合ったものを選べます。
墓石本体以外を構成する部材と読み方
続いては、お墓の周囲に設置される、墓石本体以外の部分を構成している部材の読み方や役割について紹介します。
拝石(はいせき・おがみいし)
お墓の前に敷かれている板状の石です。通常は納骨室(カロート)といわれるご遺骨を納める場所の開閉部にあって蓋の役目を果たすもので、納骨の際は、拝石を動かして中に骨壺を納めるようになっています。
ほかに、経年による墓地の土減りを防止する役割ももっており、最近では、拝石に文字彫刻を施される方もおられるようです。
拝石には地域により役割が異なる場合があって、関西地方では、お墓の前に設置する敷石を指しており、お墓参りの際に踏み石として上に立てるよう滑り止め加工などが施されています。
灯籠(とうろう)
灯篭はもともと、明かりを灯すために使用される屋外用の照明器具です。お墓に建てる灯篭は墓前灯篭といわれ、故人に向けて明かりを捧げる仏教の「献灯」に由来します。
神聖な火の力で暗闇を照らして邪気を払い、故人の魂があの世で迷わないようにする道明かりとなって神仏のもとへ導いてくれると考えられていました。
ただ、現代では実際に火を入れることはなく、ご先祖様を供養したり、お墓の荘厳さを演出したりするために設置される装飾としての役割が強くなっています。
塔婆立(とうばたて)
「卒塔婆」(そとば)とも呼ばれ、納骨や年忌法要の際に卒塔婆を立てておくためのものです。通常は、墓石の後ろに置かれる場合が多く、外柵と一体化しているタイプもあります。宗派によって卒塔婆を立てない場合は、塔婆立も必要ありません。
塔婆立には、ステンレスや木製、石で作られたものなど、いくつか種類があり、価格や耐久性などさまざまです。石製の塔婆立は頑丈で、墓石との相性も良いのですが、原料が貴重なため、最も金額が高くなっています。
墓誌(ぼし)
墓石の傍に設置される板石で、宗派や地域によっては「霊標」や「法名碑」とも呼ばれ、戒名や死亡年月日、享年、俗名などを刻んで、お墓に入る故人を記録する石碑です。
竿石の正面には家名等を彫刻し、側面、背面には個別の戒名などを彫るのですが、竿石だけではスペースが足りない場合があり、墓誌を設置して戒名などを刻みます。
ただ、現在では、竿石に文字を刻むと見えにくいという理由から、スペースに関係なく墓誌を設置するケースが増えています。一般的には1つにつき、両面で約20名分の彫刻が可能です。
外柵(がいさく)
玉垣、羽目(はめ)ともいわれ、お墓の周囲を取り囲んで隣との境界になるものです。はじめに、基礎となる根石(ねいし)、巻石(まきいし)を墓地に設置し、上に外柵を立てていきます。その柵に囲まれた部分には玉砂利を敷き、最後に、お参りをする人が立つ場所として敷石を置くのが一般的な配置です。
角に擬宝珠(ぎぼし)といわれる柱を置き、緩くカーブした延石を使ったタイプが最も多くなっていますが、ほかにもさまざまなデザインがあり、形1つでお墓の外観を大きく左右する大切な部分といえるでしょう。
竿石には文字だけではなくイラストも彫刻できる
竿石といえば、以前は家名を刻むのが一般的でしたが、現在では、イラストや模様などを自由に彫刻するケースも増えています。竿石はお墓の顔と呼ぶべき重要な場所です。故人のイメージに合わせた最適なデザインのお墓にしたいと考える方が増えた結果といえるでしょう。
さらに、最近は墓石自体のデザイン性を高めたデザイン墓石といわれるお墓も増えており、なかでも「光り墓」といわれるガラスと石材を組み合わせた墓石は、デザインのバリエーションが豊富で故人らしさを表現できると高い人気を集めています。
美しいガラスを墓石の一部に取り入れて温かく明るい気持ちに
お墓は遺族にとって、故人と語り合える大切な場所です。墓石というと、暗くて冷たい印象を受ける方が多いのですが「光り墓」のようにガラスを取り入れれば、お墓が光り輝く明るい場所へと変わります。
ガラスは竿石に限らず、さまざまな場所に使用でき、故人のイメージや遺族の想いを込めたデザインを実現できます。大切な人の”その人らしさ”を表現できる「光り墓」。お墓を購入される際には、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。